※スカイファイアーは初めから黒かった設定です。
 書いている人がダークスカイファイアー未購入なため、以下完全なねつ造になっています。
スカファは氷漬けからスタスクに助けられて以来サ軍へは行かずデ軍に残った、という前提で始まってます。
そういう無茶な設定でもいいよ!って方だけ、スクロールしてください。



























「そんなにくっついてたら歩きにくいよスタースクリーム」
「うるせぇ」

気分は最悪だった。
休憩の間にうっかり寝てしまったのがここまで響くとは思わなかった。
いや、正確には寝たことではなく悪夢が原因だ。
気分が悪くなる、最低な夢。
基地の通路を歩きながら、顔をしかめるしかおさめる方法がない。
昔から黒いままの巨体にピッタリとくっついて歩いていると、普段は「ウーマンみたいだぜ」なんてからかわれるけど
今はそんなこと気にしていられない。

「寒いの?」
「…あぁ」

お前の夢を見たよ。
夢でお前は色が違って、真っ白な色だった。
お前と俺は地球にくるんだけど、二人して磁気嵐に巻き込まれて俺だけ助かる。
センサーは使えないから早くお前を助けたくても見つからなくて。
その頃の地球は全てが氷の世界で目に入るのは同じ景色だけ。
セイバートロン星より大きな惑星をくまなく探しても情報が足らない。
何処も同じな雪の中に結局俺はお前を救えず、そのまま戦争が始まり、お前との再会は1000万年後になった。
その間俺はどんどん寒くなっていって冷たくて、からっぽになって。
お前を見つけた頃には全部ぐしゃぐしゃで歪んでた。
やっとお前の温さが戻ってきたってバカみたいに張り切ってリペアしたけど、お前が俺のそばにいたのは本当に僅かな、それこそエネルゴンを補給する間ぐらい短かった。
お前はバカみたいにちっぽけな自分の正義心を振りかざして俺を批難すると、俺を殺す軍に入った。

現実では、お前は俺の傍に残ることを決めてくれたのに、それが夢と思えるほどにスパークが痛かった。

怖かった。
お前が怖かった。
俺はお前にこんなにも振り回されていて、からっぽになるぐらいお前が必要だったのに、お前は俺をまるで化け物を見るかのような目で見る。
憎くて痛くてお前が俺に武器を向ける度に全て壊したくなる。
俺はもうどこにも行き場がない。
呼吸すらままならずスパークが引き裂かれそうなほどの悲しみに俺はお前を裏切り者と叫んだ。
全てを壊すために叫んで、撃って、本当にこんな馬鹿げた世界なんぞ壊れてしまえばいいと思った。
そんな夢だった。

「スカイ…」
「……どうしたのスタースクリーム」
「…いつか俺様がデストロンのリーダーになったら、お前は…」

不安になる。
立ち止まって、自分よりはるかに大きい漆黒の身体の持ち主を見上げる。
縋るような、祈るような気持ちとはこんなことを言うのだろう。
ああ、きっと今俺すっげぇ情けない顔してる。

「私は君のNo.2に、だよね」
「……あぁ」

少し笑う気配とともに後ろから抱き締める黒い腕に顔を擦りつけた。
いつものやりとりにも少しも安心感を感じないことが更に不安を煽ってゆく。
こいつは裏切らない。
裏切るはずがない。
夢だ全部夢なんだ。
夢のあいつは俺に向ける笑顔も声も仕種もみんな同じだったけど、あんなに冷たい目を、口にするのも恐ろしい、失望した目を。
あんな目は、サイバトロンに向けているのしか見たことがない。
そんな顔を俺にするな、そんな目で見ないでくれ。
俺は、お前に失望されるのが、こんなに。

「そろそろ行こう、スタースクリーム。明日は作戦決行日だ」
「…あぁ、そうだな」

ふるりと震えてから思考はそこで止められた。
いつもなら暖かく感じるスカイファイアーの腕の中でもちっとも暖まらなくて何とか表情だけでも普段のままでいようと笑う。
夢は所詮夢だ。




黒に抱かれる




砂がもうもうと煙を巻いて埃と共に吹き荒れている。
どこもかしこも火薬の匂いばかりが鼻についた。
味方はいない。
目の前には一体の敵。
それも副官。
さて、自分一人で乗り切れるのだろうか?

「もうお前さん以外誰もいないようだな、スタースクリーム」
「…はっ、敵を追い詰めて勝ったつもりかマイスター」

戦況は最悪だった。
どうにも我らが破壊大帝はこちらを置いて戦線離脱してしまったようだ。
通信機が壊されては、手の打ち用がない。
何より今日のサイバトロンどもは、戦力を分散する作戦だったようで、通信機を破壊されるより前にメガトロンたちから離れた場所へ誘導されてしまった。
クリフなんぞの誘いに乗って深追いしたのがまずかったが、背後からスカイファイアーが一緒に来るのが見えたから油断していたのかもしれない。
そこから集中攻撃にあい、遂にはスカイファイアーの姿も見えなくなってしまった。
心配になって連絡を取ろうにもどうしようもない。
今はとにかく、生き延びなければ。
エネルギーもあと僅かしかない、ナルビーム3発分といったところか。
果たしてそう簡単に、この男が砲撃に当たってくれるだろうか。

一発目。
はずれた。
岩陰に身を隠されているせいもあるが、マイスターは動きが素早い。
しかも向こうの武器はソーラーシステムで日が出ている日中はエネルギーの心配がないときてる。
無駄なビームは撃てない。

「逃げてばっかりでいいのか!」

相手の銃撃をかわしながら挑発もしてみるが、やはり乗らない。

「ああ、君はどうやらそろそろエネルギーが尽きかけてるみたいだしね」

歌いだしそうな声でそんなこと言われなくたって、こっちだって十分わかっている
マイスターの余裕の素振りに焦っているのがわかった。
二発目も外れ。
ああ、くそ、早くこんな雑魚やっちまってスカイファイアーがどうしているか知りたいのに。

「NO.2はどこを狙っているのかな?」
「てめぇだよ!」
「スタースクリーム、スカイファイアーが心配かい?」
「っお前には関係ない」

ついに放った三発目さえ、かすりもしないで的を通り過ぎた。
ぎりりと奥歯を噛むが、状況は最悪なままだ。
逃げれない、助けも呼べない、抵抗さえ出来ない。

「君はスカイファイアーを仲間に迎えてから変わったね」
「何が言いたい!さっさと俺を捕虜になりなんになりするがいい」

その前に近づいてきたら殴ってやる。
簡単に捕まってたまるものか。
身構えて待っているが、マイスターは笑うだけで近づいて来ない。
ただこちらがもうビームを撃てないことが分かっているのか銃は構えていない。

「随分聞き分けがよくなった…私にはわかるよスタースクリーム。おまえさん、スカイファイアーとは恋人なんだろう?」
「何をバカな…っ」
「今日だってそうだ。本当はお前だけをこちらへおびき寄せるだけだったのに…彼はすぐに気がついてこちらへ向かってきた。
 いつもどうやって甘えるんだ?彼は大きいからな…お前の相手は大変そうだ」
「うるさいっ!黙れお喋り野郎め!」

聞きたくない。
今さらなって、機体のそこかしこに入り込んだ砂埃に不快感を感じる。
じわじわと近付いてくる奴の顔は相変わらず笑っていて不気味だ。

「安心するといい。スカイファイアーを捕えたという報告はまだないよ」
「はっ!案外お前のまぬけな仲間が破壊されたのかもな!」
「いや、スカイファイアーがお前を見捨てたのかもしれないな」

ひやり、と機体が冷えた気がした。
根拠もない、ただこちらを動揺させるだけの言葉だと知っているのに今日の夢が邪魔をする。
もし本当だとしたらどうする?
あの夢のように、スカイファイアーが俺を裏切ったら。
サイバトロンの味方になってしまったら。

「っ、そんなわけあるかよ!」
「おや?随分噛みつくじゃないか。ありえない話じゃないだろう?」
「ありえないね!お前が言っていることは全部見当違いさ、残念だなマイスター」

頭で考えていることとは全く反対の言葉が口から出る。
そちらが本当だとわかっているのに、嫌な想像が止まらなかった。
スカイファイアーが俺に銃を向ける。
それから俺を裏切ったことを後悔していないと告げる。
いつものような優しい目はどこにもない、俺は。

「よく考えるんだスタースクリーム。たとえ仲間であろうと、いったい何人がお前を助けるために戦場に残ると思う?」
「やめろ!」
「答えは、ゼロだ。お前さんはいつも自分勝手に全てを見下し蹴落としてきた。
 厄介者でしかないお前を何故助ける必要がある?」
「うるさいうるさい!てめぇなんぞに何がわかる!スカイはそんなことしねぇ!あいつは…っあいつは…!!」

力が入らず、思わず膝をついて顔を隠した。
理論回路がうまく作動しない、これ以上このことについて話してはダメだ。

「…いい様だな、スタースクリーム」

目前まで近づいてきたマイスターに顎を掴まれ、バイザーの奥からじっと見つめらる。
たったそれだけなのに、どうして何もかもを見透かされている気分になる?
俺の全てをわかっているような顔をするな、俺の中を見るな。
夢でさえ、飲み込まれる。

(どこにもいくな、なんでおれにせをむけるんだ)

もう相手の顔を見たくなかった。
はやく、こいつを俺の前から消してほしい。
これも夢であってほしい。
目が覚めるとスカイファイアーがいつものいようにいて、おはようと言ってくれる。
おはようと。







* * * * * * * * * * * * * * *






システム起動。
パワー伝導率80…90…100%。
各部動作確認終了。
損傷部位自動スキャンより報告あり。
アイセンサー出力開始。

「……ここはどこだ」

先程まで銃撃戦が繰り広げられていた乾いた地とはまったく別物だが、見覚えのある場所だ。
よく自分も使っている場所。
スタースクリームがよく怪我をするから、どこにどの工具があるのか把握してしまった。
静まり返ったメディカルルームには自分の他に誰もいない。
どこか思い悩んだ顔でべったりと甘えてきていたスタースクリームも、もちろんいない。
もしここがデストロン基地のメディカルルームだとするなら、意識が途切れる前の時間から考えて
作戦失敗に対するメガトロンからの叱咤にスタースクリームが呼び出されていることはありえるだろう。
とにかく、一体誰が自分をここまで運んだのか。
そしてスタースクリームは無事なのか。
何しろスタースクリームは敵の誘いにまんまと乗ってしまい、慌てて追いかけてみたが予想以上の攻撃と
かつて自分をサイバトロンに誘ってくれた見知った顔にあまり抵抗が出来ず撃ち落とされスタースクリームを見失ってしまったのだ。
あの様子ではスタースクリームもリペアが必要に違いない。
自分より早くリペアが終わりこの場にいない、それが一番安心する仮定だ。

「よぉ。目ぇ覚めたか」

薄暗い室内に光が差し込み、スタースクリームに良く似た水色が声を放った。
姿は似ているが、彼はスタースクリームとは全くの別物だ。

「サンダークラッカー…」
「…今すぐ報告が欲しいって顔だな」
「スタースクリームは?」
「順番に言うぞ。まず、今回のエネルギー奪還計画は失敗だ」
「そうか…ではセイバートロンに送るエネルゴンもしばらくお預けだな」
「レーザーウェーブには悪いがな…。それから、お前の身体は簡易リペアしか済ませてない。不調部分は?」
「ない」

本当は腕への電気信号伝達がうまく出来ていないが、この際関係ないだろう。
けれどここで彼を納得させなければこれ以上話を聞くことも出来ない。
この様子では、スタースクリームは基地に戻ってきていないだろう。

「その言葉信じるぜ…?さて本命の話だ。作戦失敗よりスタースクリームは、まだ帰還していない」
「……」
「お前がデストロンに来る前もよくあったことだ。もしかすると戦線を離脱してそこら辺を飛んでいる可能性もある」
「そんなことはわからないじゃないか!」
「スタースクリームの通信機が壊れて連絡が取れないんだ。最悪捕虜になってる可能性もある。そこでメガトロン様より命令だ」

空気が変わった。
好戦的ではないいつもの彼の表情が、如何にもデストロンらしい厳しい表情へ変貌する。
リペア台に座った身体をまっすぐとサンダークラッカーの方へ向ける。

「ジェットロン部隊隊員スカイファイアー。
 現在行方不明の航空参謀及びジェットロン部隊指揮官であるスタースクリーム隊長の捜索若しくは奪還隊長に貴官を命名する。
 スタースクリーム隊長の状況が解り次第本部のサウンドウェーブに連絡をしろ。
 勝手な行動はするな。今回は貴官一人のみでの行動となる。充分な注意を持って無事帰還するように」
「了解」

軽く敬礼をサンダークラッカーに向けてから、すぐさまリペア台から降りる。
座ったままでも十分下にあったサンダークラッカーの顔が、また一段と下になった。
それに苦笑いをしながら私を見上げて、彼が口を開く。
ここまで見上げるのは辛いだろうが、彼はどうにも顔をきちんと見て話すタイプらしい。
やっぱりスタースクリームとは大違いだ。

「っあ〜肩こるわ…この言い方。第一お前のが年上だしよ。古参は俺たちだけどスペックはお前が上だ。そのうちお前は俺より偉くなるぜ」
「そんなわけないよ」
「まぁ今でも充分スタースクリームの右腕だけどよ…そうだ。スカイワープに連絡しとけよ」
「スカイワープに?」
「ああ。お前を運んだのはスカイワープだ。燃料も少なかったのに基地までお前さんを運ぶのは苦労したようだぜ。未だにへばってらぁ」

スカイワープは中々ワープを使わない。
命令されなければ使わない程らしいが、やはりエネルギーの消費の関係もあるのだろう。
本人が忘れている節も多々あるが。
そのワープを使ってまで助けてくれたのだ。
サンダークラッカーの言うとおり、帰ってきたらお礼を言わなくてはならない。

「そうか…わかった」
「本当はコンドルをスタースクリーム捜索に当たらせるはずだったけどよ…サウンドウェーブも怪我しちまって心配そうに離れやしねぇんだよ」
「カセットロンはサウンドウェーブの一部だからね」
「…ま、お前サイバトロンと色々あったみたいだし…戦闘にならないだろうさ」
「…そうだといいがね」

そうあって欲しい、と思わずにいられなかった。
サイバトロンにならないか、と誘ってくれた彼らには言葉に出来ない程感謝している。
自分だって、デストロンでの破壊行為が辛い時もある。
でも、彼がいるから。
置いていくような真似を、もう二度とできない。
彼にはもう十分孤独を味あわせた。
選択を間違って、また同じことを繰り返すことなど出来ようがなかった。
けれどサイバトロンの彼らを傷つけることもしたくない。

いつだって葛藤している、情けないぐらい。
震えるほど自分のしていることに嫌悪する瞬間がだって、ある。
そしてそんな時に、サイバトロンが羨ましくなるのだ。
向こうは私のことなど、他のデストロンと変わらないと思っているだろう。
なんせ、サイバトロン行きチケットを目の前で捨てたようなものだから。
私の葛藤を理解してくれているのは、サイバトロンでも限られた者達だ。
彼らは戦闘でも極力私に銃弾を当てることは少ない。
私も、サイバトロンとの戦闘ではスタースクリームを守るばかりで攻撃はしないことが多い。
あいまいな関係だ。

「一旦戦闘があった場所に戻ってみるよ」
「ああ、わかった」

軽く頭を振って思考を散らし、サンダークラッカーにリペアのお礼を言ってからメディカルルームを後にした。
海底基地の出撃口はいまだ海上に上がったままだったので、すぐさまトランスフォームして先ほどまで居た場所へ向かう。
エネルギーもいつの間にか充電されていた。
帰ったら、もう一度サンダークラッカーにお礼を言わなくてはならない。

戦場はすぐにわかった。
荒地とはいえ、煙がくすぶっていたし、機械の破片らしき物も飛び散っている。
可燃物質が周りになかったのが幸いだ、そのぶん二次災害が少ない。
高度を下げてから、目を凝らす。
スクラップになったスタースクリームを発見するのだけは御免だった。

しばらく飛び続けて上空から地上を探索しているとついに発見した、スタースクリームだ。
一目でわかるカラーリングが一体のトランスフォーマーと向き合っている。
どうにも戦闘をしているようだ。
ポルシェに見える彼にスタースクリームが閃光を放つ。
けれどそれは当たらなかった。
二発目も三発目も同様に、かすりもしない。
急いでロボットモードにトランスフォームして、スタースクリームの顎を掴む彼に声をかけた。

「マイスター!…私の、大事な上官を苛めるのはやめてもらえるかな?」
「…スカイファイアー。私は苛めてるつもりはないんだがね。今のスタースクリームの顔があんまりにも可愛らしいんで、ちょいとメモリに記憶してただけさ」
「すか…い…」
「マイスター副官。貴方は素晴らしいサイバトロンだ。出来れば戦いは避けたい…」
「……わかったよ。君がそんなに言うなら仕方ない」
「感謝する」

ポルシェは困ったように笑って、スタースクリームからすぐに手を引いた。
私は急いで駆け寄って、スタースクリームを抱きとめる。
すぐさま簡易スキャニングでダメージの具合を調べて、エネルギーが尽きかかっているだけで大きな傷はないことがわかり一息つけた。
スタースクリームを抱き起こし、腕に抱えてからマイスターに振りかえる。
彼がじっと私たちを見つめ、観察していたことはわかっていた。

「…君にはデストロンは辛いだろう?」
「…もうその話は終わったはずだよ、マイスター」
「そうだった、すまない。…罪作りでお騒がせな上官を持つと大変だね」
「ああ…本当に」

会話こそ穏やかだったが、お互い探り合っているのが嫌でもわかった。
愛想笑いでその場を濁して、ロボットモードのまま足元のジェットを可動させる。
無駄な争いも起こらなかったので、エネルギーもほぼ満杯のままだ。
お互い友好的な挨拶を交わして、すぐさまその場を後にした。
スタースクリームを一刻も早くリペアしたかったのもあるが、マイスターとの会話は酷く疲れるのだ。
腕の中の存在を抱きしめる力を少しだけ強めた。





* * * * * * * * * * * * * * *





スタースクリームの修復完了から6時間経過。
リペアから目覚めるなり、スタースクリームはスカイファイアーをすぐさま探し出し、ずっと同じ体勢でいる。
ずっと同じ体勢、というのはつまり、ずっとスカイファイアーに抱きついて甘えてきている、ということだ。
おかげで6時間経っても二体はメディカルルームから他の部屋へ移動することが出来ないでいる。
スカイファイアーが少しでもスタースクリームから離れようとする動きを取ると、あらゆる手段で阻止される。
でも輸送機は、嬉しい、としか感じない。
純粋な喜びで満たされ、少し意地悪がしたくなるだけだ。

「スカイ…スカイファイアー…」
「あまえんぼさんだね、スタースクリーム。マイスター副官は怖かったかな?」

膝に乗って、正面から抱きしめてくる存在を抱きしめ返して撫でる。
甘さばかり滲んでいる声にうっとりと酔ってしまいそうなスカイファイアーの目は、本当に楽しそうに笑っている。

「あいつ…お前が…俺……」
「…もう大丈夫だよ。私は君の傍から離れない。離れたって迎えに行くから」
「…当たり前のこと言うな」
「スタースクリーム…」

抱きついているせいで顔は見えないが、非常に照れているらしい。
ぐりぐりと顔を黒い胸に擦りつけ、時々見える顔の角度から唇を噛んでいるのがスカイファイアーにはわかった。
これは、可愛い。
普段も可愛いが、こうやってきちんと甘えてこられると、もっともっと甘やかしたくなる。
あまり甘やかすなと、サンダークラッカーやスカイワープから注意されているのだが、今日ぐらいいいだろう。
スカイファイアーは、少し照れたように突き出された唇にキスを落として可愛がることにした。

「ん、もっと、ちゃんと」
「……朝から、様子が変だったね。何かあった?私は何かしたかな?」
「…した」
「ごめんね」

その間もキスは続く。
何度も、何度も、触れるだけのキス。

「わかってないのに謝るなよな」
「うん、でも、ごめんね」

合間にクスリと笑うスタースクリームの息が唇にかかって、くすぐったい。
それも可愛いから、スカイファイアーはまたキスをした。

(どうしよう、止まらない)

何回したのかわからないぐらい唇を合わせてから、二体はようやく落ち着いた。
スタースクリームが、続きを口にする。

「…何かしたのはお前じゃない。けどお前だ」
「……よくわからないな」
「夢で…お前はサイバトロンになってた。それから…俺、を……っ」

少し苦しげに吐き出す言葉。
スタースクリームを抱きしめる腕に力を込める、伝わればいいのにとスカイファイアーは思った。
そういった些細な感情の伝達ができるほど、機械生命体はまだ発達していないからこそ言葉があるのだとわかっていても願わずにいられない。
スタースクリームの不安を取り除くために必要なら、己の身体を引き裂いてスパークを見せてもいいと思える程だった。

「…私はデストロンに残った。君がいるから。私がそうしたかった」
「本当は、お前は夢みたいにサイバトロンに行きたかったんじゃないか?
 お前はデストロンでは甘い部類だ…優しすぎるんだ。きっとそのうち、お前は変になる…っ!
 何万年も、何千万年もこの戦いは続く…その間何かを壊して殺してしまうことに。
 スカイファイアー、お前は…俺が変わったように、お前も…!」
「スタースクリーム、落ち着くんだ」

伏せていた顔をスタースクリームが上げる。
感情を吐露するようにぶつけるスタースクリームの言葉の波が思っていたより激しくて、スカイファイアーは少し戸惑った。
スタースクリームの回路が計算をはじき出す。
何度も何度も繰り返し頭で考えたことを口にして、怯え、震える。

「怖い、怖いんだ。お前がデストロンにいてもダメ、サイバトロンにいてもダメ。
 どうあってもダメなんだ。どのシミュレーションもお前を傷つける…」
「スタースクリーム…私は後悔していないよ。戦う科学者さ。君を守り君といたい。
 犠牲はあるだろう…諦めもつかない。
 確かにサイバトロンの皆は私のデストロンへの不信を気付いて、優しくしてくれたよ。
 でもここにいても抵抗はできる。破壊行動を嫌うようなね。
 サンダークラッカーを真似してうまくやってみるさ。ギブアップはなしだ。疲れたら君がいる。
 少なからず、私はあと何千万年で変わってしまうことなんてないよ。それに、戦いが終わる可能性もある」

反論を赦さないようにスカイファイアーに優しく唇を塞がれるだけで、満たされるのはなぜだろう。
羽のように軽い触れ合いが信じ込ませようとすることは鉄みたいに重く悩んでいたことなのに。
一瞬の口づけがもたらすものは波紋が拡がるように残り続ける、幸せ。
手放したくない想いと比例する体がその一度で離れようとするスカイファイアーを再び引き寄せる。
安心させるための幼稚なもので誤魔化されない、とばかりにスタースクリームが唇に噛みついた。

感情が、ぐるぐるなんども数値に変換されて処理されるより早く次の感情が溢れて混乱する。
もっと奪っていい。
撫でて欲しい。
離れることが不可能だと知らしめて。

満たされたはずなのに、スタースクリームの求めるものは次々出てきて抑えられない。
はやくはやくはやくはやくはやく。
肩に刻まれたインシグニアを引っ掻いて緑に光る培養液みたいな光沢のアイカメラを舐めた。

「なぁ…やろ」
「…いますぐ?」
「……」
「いいよ」

唇同士がもう一度しっかりと触れ合う。
お互いの咥内で混じったオイルが零れ、自然とスタースクリームの輪郭を伝った。

「…さっき、君は自分が変わったと言ったけれど」
「…なんだよ、そんなこと今さら…」

いいから早く続きが欲しい。
こういうときに焦らしてしまうのが、スカイファイアーの悪い癖だとスタースクリームは顔をしかめた。
そしてスタースクリームが知っている彼は、うんざりするほど自分の信念を貫いて譲らない部分がある。

「君は全く変わっていないよ。私が保証する。強情なところも我儘なところも甘ったれなところも、皆私の愛するスタースクリームだ」

にこりと目の前にある笑顔が、とてもではないが先ほどまで自分と濃密なキスを交わしていた相手だと思えずスタースクリームは恥ずかしくなった。

「…甘ったれてない!」
「そりゃ、更に口がちょっとだけ悪くなったと思うけど…」
「そんなことない」
「いいや。悪くなった。全く、禁止用語の保護フィルターはつけっぱなしにしておくべきだった…」
「あ、あんな幼少トランスフォーマー向けのプロテクター、いつまでもインストールしておけるかよっ」
「でも、昔は私が頼んだらしてくれたじゃないか」
「にやにやすんな!」
「今も頼んだらしてくれる?」
「…っうー」

どう?と覗きこむスカイファイアーの目は自信に溢れている。
スタースクリームは思わず唸り、返す言葉を探すが、見つからない。
突っぱねてしまえばいいだけなのに、それが出来なくさせる男の底意地の悪さを、スタースクリームは憎んだ。

「だいすき、スタースクリーム」

囁かれた言葉は毒を孕んでるんじゃないかというぐらい甘くて、スタースクリームの聴覚器のずっと奥にとどまり続けた。




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書いてる時は、ダークスカファの商品サンプル画像の目が緑だったので目が緑っていう描写をしました。
たぶん、販売された実物は赤になっていると思いますが緑のままで。
黒スカファで近くにずっといたら、スタスクはでれでれ甘えてばっかりだろうなぁという妄想。